古糊(ふるのり) ※弊社では今後、古糊の販売も考えています。
精製した小麦粉澱粉を水で希釈し、加熱して糊を作ります。
炊きあがり冷めたら使える、接着力の強い糊を新糊(しんのり)と呼びます。新糊は年中炊いて使っています。
対して、一年で一番寒い大寒の時期に糊を炊き、甕(かめ)に入れ貯蔵。5~10年掛けて熟成・発酵の果てに出来上がる糊を古糊(ふるのり)と呼んでいます。
市販はされておらず、表具師自らつくる以外、手に入れる方法は有りません。
古糊には接着力・コシがほとんどありません。上質な和紙の繊維は長く出来ています。糊付けした和紙を作品裏面に貼り、何百、何千回と刷毛で叩き、その繊維をほぐし喰い込ませ接着させます。「裏打ち」と呼ばれる所以です。
掛軸は巻いて掛けて…という作業を繰り返す特殊な鑑賞方法をする美術品です。
古糊で仕立てた掛軸はコシ柔らかく仕上がります。コシ柔らかという事は余計な強張りもなく、ストンと自然体で掛かるという事に繋がります。
いつか必ず来る次の修復。その際には古い和紙を剥がし新しい和紙に取り換える。という作業が必須です。
古糊を使った裏打ち紙はキチンと取り除けます。作品に与えるストレスは少なく済み、より安全に修復が進められます。
掛軸の裏打ちに於いて古糊に勝るものは無いと思っております。
考え方は人によりさまざま。古糊仕立ての掛軸は湿度・温度変化に非常に敏感で、狂い易くあります。
現代建築には不向きなのかもしれません。
製品として安定している化学物質を含んだ糊へと、ほとんどの表具師は移行しています。
自ら糊を作り、掛軸を仕立てているのは長野県では弊社だけのようです。
芳仙洞はこんな時代だからこそ伝統的手法・技術を守り続けたいと思っています。
大寒の仕込み
毎年大寒の時期に行う欠かせない仕込み。古糊の作り方は工房ごとに炊き方・保管環境も違います。弊社の一端をご紹介いたします。
水も大事
Water is also important
希釈する水も大切です。弊社では湧き水を使っています。

材料は小麦粉澱粉と水
Ingredients is Wheat flour starch printing & Natural water
澱粉と水を混ぜ水溶液を作ります。

薪で炊く
Using Firewood
弊社はかまどと薪で糊を炊いています。炊きあがった糊は甕(かめ)に入れて保管します。



たくさん炊く
Make a lot
過去に大きな掛軸を修復した際、古糊が不足しかねない。という事態が発生しました。それからは炊ける時にたくさん炊くようにしています。

カビの種類はさまざま
Various Mold
過去に炊いた甕を開封します。糊に栄養分が多いうちはカビが生えます。経年するごとにカビの量が減り、糊のにおいも変化していきます。

カビを取り除く
Remove Mold
カビの膜を取り除きます。カビの下には熟成の始まった糊が。

寒の水を張る
Fill the Wintry water
カビを取り除いた後、雑菌のない寒の水を甕の中に注ぎます。

封印
Seal
水を張り終えた甕に木蓋と和紙で封印します。
この一連の作業を毎年大寒に繰り返します。

古糊
Aged Starch Paste
5~10年掛けて完成する古糊。滑らかで美味しそうです(食べられません)

経年変化
Time changes
左から令和5年炊き、平成29年炊き、平成25年炊き、平成23年炊き(写真は令和6年/平成36年大寒に撮影)
カビを取り除き、経年するごとに全体量は減少し、完成時には半分程度まで減ります。色も変わっていきます。
※平成23年の糊は裏漉しして、別の甕に移し替えてあります。

冬季は甕を工房内へ
Move to another room
冬は氷点下-10℃となる弊社工房付近。糊が凍結しないよう糊保管庫から工房内へ移動します。せっかく沢山炊いているので、糊の成長記録を採っています。

糊の保管庫
Storage
冬季以外は糊専用の保管庫に置いています。
100個ほどあります。

裏打ち
Backing/Line
出来上がった古糊を水で希釈。和紙に塗り、作品裏面に貼り、刷毛で打ち込みます。
